新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界の各国で「医療崩壊」の状況が報道されました。
ニューヨークでは「医療崩壊」の次に「葬儀崩壊」という事態まで陥りました。
日本経済新聞
新型コロナ爆発のNY、医療の次に来た「葬儀崩壊」
そして、日本でも「医療崩壊」や「葬儀崩壊」が起きるかのような記事を見かけました。
葬儀屋が儲からなくなる事を葬儀崩壊とは、呼んでません。
— 佐藤信顕@葬儀葬式ch (@satonobuaki) May 13, 2020
直葬や一日葬が急増中…コロナ禍で「葬儀崩壊」が加速 #ldnews https://t.co/8wvlgRVosn
そこで、私なりに日本の葬儀崩壊とはどういう状態なのか定義してみたいと思います。
葬儀崩壊とは?
「葬儀崩壊」という言葉はもともと存在せず、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大によって「医療崩壊」が問題になり、ニューヨークなどの爆発的に感染者が増加した地域で遺体の埋葬処理が追いつかない状況の事を「医療崩壊」を文字って「葬儀崩壊」と言われています。
葬儀崩壊の定義
葬儀崩壊の定義について「遺体の処理が追いつかない=葬儀崩壊」とした場合、状況は以下の理由が考えられます。
- 安置施設不足によって遺体を安置することが出来ない
- 人員不足によって埋葬処理を行うことが出来ない
- 火葬場不足によって火葬することが出来ない
- 埋葬場所不足によって埋葬することが出来ない
安置所不足
人が亡くなった場合、日本だと通常24時間以内の火葬は出来ないので、どこかへ遺体を安置する必要があります。一般的に安置する場所は斎場(民間、公営)、専用施設、自宅になります。
東京都内でも安置場所が無くてたらいまわしなんて事は聞かないので、安置所が不足している事はないと考えられます。
自宅安置を含めれば安置する場所の確保自体は難しくはないでしょう。しかし、感染者の遺体の場合は感染リスク軽減のため自宅安置は出来無いと考えた方が良いかもしれません。
いい葬儀に出てくる斎場の数は691件あります。なので、数字上では1箇所につき1人安置できたとして、1日に691人までであれば安置する場所はある事になりますので、安置だけで考えれば安置場所は十分にあると言えるでしょう。
人員不足
遺体を搬送、安置するには最低でも2人は必要ですが、時々搬送に1人で来たなんて声も聞きます。さらに通常時だと搬送用のシーツに遺体を納めて搬送しますが、指定感染症で亡くなった方は新型インフルエンザ等ガイドラインで以下のように記述してあります。
- 遺体は非透過性納体袋に収容・密封する
- 非透過性納体袋に収容・密封されていれば特別な感染対策は不要
- 搬送、火葬に従事する人は手袋、マスク、ゴーグルを着用する
感染者の遺体の搬送は通常時より感染対策の準備に人手や手間がかかるという事です。
また、葬儀の仕事は激務なので長続きしない人も多く、慢性的な人手不足は昔から言われています。理由としては
- 休みは取りづらい
- 24時間365日営業
- 夜間の搬送もある
- 常に死と向き合う
と言った理由から退職していく人も多く、葬儀業界はコロナ騒動の前から人手不足は言われています。
火葬場不足
東京都の年間死亡者数は2018年で119253人、1日あたり約326人が亡くなっている計算になります。ちなみに群馬県では22937人なので、東京都と群馬県と比較すると死者数は約5倍の差があります。
では東京都と群馬県にどれだけの火葬場があるのかというと
東京都の火葬場は25箇所(23区内に9箇所、23区外には16箇所)
群馬県の火葬場は16箇所
各火葬場の火葬炉の数に違いはありますが、死者数の差が5倍に対して火葬場は9箇所しか多くありません。なので、東京都ではコロナの問題以前から地域によっては逝去から火葬までの期間が長いと1週間もかかるケースがあると言った事も聞きます。
東京都はもともと火葬場が不足している
埋葬場所不足
少し前の記事ですが、こんな記事がありました。
ダイヤモンドオンライン
都会の墓不足はウソ!?不人気墓地「墓余り」の実態
人気のある墓地の倍率が高いだけで、遺骨を納める墓地が足りないというわけではないようです。
また、日本の場合99%以上の遺体が火葬しますので、遺骨の状態であればそこまで場所は取らないから遺骨が溢れるという事も考えられません。
東京都の埋葬場所は不足していない
まとめ:コロナと関係なく葬儀崩壊している件
ここまでの内容をまとめると
- 安置場所はある
- 葬儀業界全体で慢性的な人手不足
- 都内の一部地域では火葬場が不足
- 墓地は有り余っている
すでに4つの項目の内2つの項目は該当している状況になります。また、諸外国と違いほぼ100%の火葬率の日本において埋葬場所が不足して問題になるような事はないとも考えられます。
安置場所についても、瞬間的に死者が増加した場合、搬送する人手不足によって安置ができないという状況が正しいかと思うので根本的な安置場所の問題でもありません。
なので、葬儀崩壊とは
- 人手不足
- 火葬場不足
によって起きる状況だと考えられるので、東京都の一部地域ではコロナ騒動の前からすでに「葬儀崩壊」が起きている状況のではないでしょうか?
つまり、今回のコロナ騒動が原因による葬儀崩壊は起きていないというのが現状だと思います。